幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。
§眠れますように
Y.ASARI
この曲には新しい取り組みが二つある。一つは全編日本語詞、もう一つは全編ギター。楽曲のテーマは眠り(あるいは眠れないとき)。印象的なのはハンドライティングのMV。言葉の長音と手書きの文字がシンクロする演出はこれが眠りについての歌である事と踏まえなくとも、とても効果的に呼吸を司っているように感じる。楽曲は極めてシンプルでギターのストロークが淡々と時を刻んでいく。前作の大きなテーマと根底では同じ、すなわち眠れないことへの深淵な歌なのではないかと思う。しかし眠れることをうたう事で一層身近な様相を帯びている。
ハンドライティングはこれを眠るべき本人と捉えた場合、眠っていないということになる。だから文字をノートに綴っている。メタ視点をどこに置くかで見え方は変わる。その多重構造が細部に宿っており、このワンアイディアはとても巧みだ。
力を抜いて、呼吸を整えて、自身をいたわる。しかしそれでも眠れない時もある。ただしひとりではないから不安になることはない。慈しみに満ちた言葉が染み入るように入り込むのは淡々とした演奏の効果だろう。言葉と音楽が表裏一体となったこの作品でayaradio727の方向性が見えたように筆者は思う。
この曲についてはギターのストロークについて言及が必要だろう。筆者が受けた印象はこの演奏がこの歌詞とメロディーには必要だ、という事。巧みでなくとも楽曲に寄り添うことは出来る。それは与えられた力の最善を尽くすということに他ならない。ベッドルームレコーディングというと「最善」といった世界観とは無縁さを感じる向きもあろう。しかし表現は常にその時点での最善であることが望ましいのではないか。このストロークはその時点の最善なのだ。だからこそ楽曲に寄り添っている。そこを感じ取れればこの豊潤な表現に浸ることができる。印象としてはこの4曲目までが作曲の初期段階と受け止めた。
この曲のMVはこちらです↓

この曲のギターのストロークの拙さを「その時点の最善なのだ」の言葉で表現として迎えてくれるY.ASARIさんはギターを弾く方なのだろうか?「眠れますように」は今もayaradio727の作品のなかでも引き続き重要なテーマとして存在し続けているので、あらためてのレビューがとても嬉しいのでした。
山野浅里さんのNoteはこちらです↓
