幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。
順番に掲載していきます。
§Not Too Late
ayaradio727というアーティストが音楽活動を開始したのは、2020年7月27日。この日に彼女は「Not Too Late」という曲を発表した。元々様々なクリエイションに関わっていた彼女だが自作の音楽作品の発表は本作がほぼ初めてだと言う。また、彼女はこうも言う。「何歳からでも好きなこと始められる」と。淡く朧げな感情を鼓舞するかのようなメッセージだ。
この曲のトラックは極めてシンプルだ。ごく簡単なエレピのコードを中心にしつつ、ささやかなリズムトラックや時折はさみこまれるコーラス、そのほかのパーツも含めた簡潔なトラック。それらに支えられた朴訥なメロディーから成り立っている。いわゆるポップスにおけるブリッジやフックといった考え方はここには見られない。ただ静かに水面に浮かぶ旋律をそのまま乗せたというような作りだ。まるで自由詩を歌う詩人のようだ。
この曲のMVで彼女は曲の終盤にこんなメッセージを打ち出している。
「1曲作れたのが嬉しくて!」
これは全ての表現者が是非今一度向き合ってほしいメッセージだ。作り上げる事。それがどんな表現なのかはその人次第だ。いづれにせよ、何か一つ作り上げる事。何をもって完成かと言うことを問うているのではない。ただ作ると言う行為そのものの話だ。
そこに込められたあらゆる感情を想う。この曲は確かに「初めて」の曲かもしれない。しかしこれは初めての表現ではない。そしてこれは筆者の想像の域を出ないがおそらく完成しつくせなかった何らかの表現や想いがその後ろには存在する。だからこその「1曲作れたのが嬉しくて!」ではないかと思う。MVをもう一度見てほしい。そこにあるのはこの楽曲に寄りそうさまざまな絵画やメッセージ、引用を含めた想いの集積だ。この曲は初めての曲かもしれないが、初めての表現ではない。
そのサウンドは、後の多様な音楽活動から振り返るとayaradio727のスタートに相応しくあらゆる要素が織り込まれており、総じて言うなら「ベッドルーム・ポップ」と言われるようなタイプの音楽かもしれない。しかしそのベッドルームポップ故の音響の魅力を上回る表現者としてのフィーリングがこの曲にはある。そうした重層構造が「1曲作れたのが嬉しくて!」に込められていると感じた。全ての表現者が是非今一度向き合ってほしいと切に願う。
Y.ASARI
この曲のMVはこちらです↓

最初の1曲を作れたことがとにかく嬉しかったときの気持ちをこんなふうに汲み取ってくださる方がいらっしゃったことに感激しています。今もこの曲は私の原点となっていて大切です。
山野浅里さんのNoteはこちらです↓
