山野浅里レビュー【No.7】ayaradio727「Always With You」

REVIEW

幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。

§Always With You

この曲は2021年3月11日に発表されている。ピアノの音を静かに重ねたインスト曲だ。この曲が言葉で歌われない事の意味はMVの中で表現されている。しかしまずは自身初のインスト作品として作られた本作の楽曲そのものに触れたい。

冒頭はRESPECTですでに萌芽している分散コードによる静かなアルベジオ、そこからやがて旋律が分岐していく。初めは高音を中心に、中盤から徐々に中音域で旋律を牽引する音が入り込む。そしてアルペジオのパッセージが細かく刻まれるようになり再び高音の旋律があわられる。しかしその旋律はアルベジオのパッセージではなく冒頭からの静かな印象を崩さない。そして最後にそれらは静かに各々の役割を終えて終章へと向かう。

ではMVに添えられた言葉は楽曲の進行とどうリンクするか。
まず冒頭旋律が分岐し始める前に「2011-2021」の文字が現れる。2011は多くの日本人にとって特別な数字だ。楽曲が発表された日からみても、すなわち震災を連想する数値だ。しかし意味するところは実際は様々であろう。すなわち特別な想いからの10年なのだ。10年という年月は決して短くはない。しかし忘却するにはあまりに短い。そこに生きるということへの想いを感じる。だからこそ言葉にならないし、それを託した先が本作の楽想につながっているのではないか。

あらためて楽曲に立ち返ると、力強く中音域に戻ることもあり、アルペジオに収束するところもあり、アルペジオが細かくなってもその旋律は変わらず、あるいは分岐し、あるいは結合する。筆者はこれを楽想の展開というよりもこの10年を様々な想いと共に生きてきたということの表れと受け止めた。それは受け手によっても様々であり、だからこそここでは言葉ではなく一音一音を慈しむピアノによる表現になったのだと考える。

Y.ASARI

この曲のMVはこちらです↓

ayaradio727
ayaradio727

この曲にはMVに添えた言葉だけで説明は十分だと思って特に解説をして来なかったのですが、ASARIさんは楽曲そのものから私の10年間の言葉にならない想いをピアノでの表現として受け取って下さって本当に感謝します。伝わるとこんなにも嬉しいものなのですね。

山野浅里さんのNoteはこちらです↓

ASARI|note
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