山野浅里レビュー【No.11】ayaradio727「Good Music!!!」

REVIEW

幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。

§Good Music!!!

1年の間に10曲を発表することが当初の目標だったと言う。そして前作でそれを達成したことで一区切りついた部分もあろう。本作はこれまでの制作プロセスとは視点を変えて「作曲から始めてあとで歌詞をつけるやり方」でつくられたという自身の解説が付されているが、仕上がった作品はこれまでの作品と比べると大きな変化があるように感じる。これまでのayaradio作品は、インスト作品「Always With You」においても言葉が楽想を牽引しており、つまりどの作品においても言葉がまずあったと思う。しかし今回は楽曲が先に立つ制作プロセスだった。その点を踏まえて本作の彼女自身の視点を想像して筆者がたどり着いたのは、本作がはじめて意識的に外に対して開かれた作品ではないかという点だ。

彼女自身の解説を踏まえ、本作の制作プロセスに立ち返ってあらためてメロディーとコードから先に楽曲を眺めてみると、まず冒頭は下降が美しいまさに王道とも言えるコード進行からはじまる。自在なテンポチェンジ等、これまでの作風を踏襲したごく自然なayaradio作品の骨格を構成しつつコード進行から見るとポップソングの王道アプローチに挑戦していく様もあり、全般的に楽想にはある種の余裕を感じる。

MVで注目したのは、”ayaradio727 is newborn”というフレーズが印象的な中間部分のラップとそれに合わせたダンスのシーンだ。これまでの作品との対比においてもこの部分の躍動感は際立っているが、同時に声色を使い分けるなど表現の多様性もあり、バランスを保ったまま外に対して開くアプローチを体現しているように感じる。声色や躍動感の使い分けは楽想に言葉以外の要素で奥行きを与えると言う点で大いに貢献しているように思う。

一方、歌詞において本作は「メロディーのとりこになった」と歌い始め、「あきらめなくていい、You can start from any age」と締めくくるが、その言葉の響き自体が楽器を演奏し歌い踊る姿を自然に見せていくことでしっかりした楽想且つ外に対して開かれたメッセージになっている。そのためにMVを含めたトータルにおいても結果として余裕をもった作風に仕上がったと感じる。

Y.ASARI

この曲のMVはこちらです↓

ayaradio727
ayaradio727

この曲は私が作曲したいと思うようになった直接のきっかけであるOfficial髭男dismの音楽から受けたクリエイティヴィティへの刺激を私なりのポップソングとして作品にしたつもりの1曲で、特に明るい1曲となっています。1曲目の「Not Too Late」からずっとくりかえし「始めるのに遅すぎることはない」と歌い続けてここまで晴れやかな曲を作れるところまで来れたのも「継続」出来たからこそだなぁと思います。たしかに意識的に外に開かれた作品になっているなぁとASARIさんのレビューによって気付かされました。

山野浅里さんのNoteはこちらです↓

ASARI|note
音楽について書きます。 (15min recordsお手伝い係:X Twitter @15minrecords)
タイトルとURLをコピーしました