山野浅里レビュー【No.13】ayaradio727「ともだちのこどもちゃん」

REVIEW

幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。

§ともだちのこどもちゃん

本作のタイトルは歌詞を読み進むにつれてその視点がどこに置かれているかが見える奥行きをもった仕掛けがとても上手い。あらためて言葉をとても慎重に選ぶアーティストだと思う。

本作はメロディーのわかりやすさが際立っているが、一方でタイトルから受ける一般的な印象からすれば実に内省的な構造を保ったまま楽曲は続く。筆者はこの内省さを後述の和声に求めた。一方全体の外観としてはGood Music!!!に見られたメロディー志向と当初からの彼女の持ち味である言葉の深さを織り交ぜた作風に仕上がっている。曲自体は2021年3月には出来上がっていたところ発表は9月になったという本人の解説がある。Good Music!!!の発表は同8月なので、もしかすると本作での試行錯誤が活かされたのかもしれないと想像する。また、Something strangeが10曲目(1年に10曲つくるという目標を達成した曲)になるが、実際にはこの曲がすでに構想として存在したことになる。そういった完成に向けたこだわりも感じられる興味深い立ち位置にある楽曲だ。

内省さについては歌詞「いつでも 力になりたいと 思っているからさぁ」のマイナーコードから始まるアプローチが印象深い。一つ前のパラグラフで「頼りないかなぁ」という独白があり、それでも「力になりたい」というある意味救済のイメージがあるところにマイナーコードを配置したことに「力になりたい」気持ちの繊細さを感じざるを得ない。その予感通り「ともだちなんていないような」気がしていたが、「こうして連絡できるの 本当に嬉しいよ」とつながっていく。これは最後フレーズの「遠くから」の部分についても同様で見守る本人の繊細さがコード、メロディー、言葉全てに感じられるところになっている。

こうした繊細な動きを言葉だけでなく音楽のあらゆる要素から引き出したうえで、MVはおそらく本人による手描きのイラストではないかと思われるが全体を覆う優しい声色、音色に寄り添った優しげな画風でまとめあげている。とても上手い作りだと思う。

Y.ASARI

この曲のMVはこちらです↓

ayaradio727
ayaradio727

この曲に関しては、いちばん素直に自分の中から生まれた1曲なので、やはり特別な思い入れがあります。歌詞のどこにも「創作がない」のが「ともだちのこどもちゃん」で、そのままの私が出ているなぁーと思います。メロディに関しても自然にスムーズにするすると言葉と一緒に出てきて「もしかして既にある曲なのかなぁ?」と心配になりました。歌を通して気持ちを表せるようになれたことが何より嬉しく、この曲を歌うときにはいつも以上に素直な自分になれている気がします。

山野浅里さんのNoteはこちらです↓

ASARI|note
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