山野浅里レビュー【No.14】ayaradio727「夜のパレードⅡ」

REVIEW

幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。

§夜のパレードⅡ

この曲は本人による解説が付されていない。しかしそれであってもこの曲については補足が必要だ。なぜ「Ⅱ」なのか。答えは「Ⅰ」があるからなのだが「Ⅰ」が何かについては語られていないのでこれ以上言及はしない。しかしこの補足は楽曲を理解するために極めて重要と筆者は受け止めているのであえて冒頭に記載した。

イントロはまず下降するコードがとても美しい。そのコード進行に誘われるまま歌われるのは極めて淡々とした情景描写だ。それが一転するのは「回る回る回る」からのフレーズだ。ピアノは分散コードをとても絵画的に演奏し、言葉と音がシンクロしていく様を印象強くする。言葉と音の一致だ。しかし「時を刻んで」まで回り続ける美しいフレーズはここで長い休符に入る。この休符が、その後に続く「泣かないで」に重みを持たせている。筆者は何度聴いてもこの展開に驚愕する。本当に言葉が迫ってくる効果的で素晴らしいアレンジだと思う。

「泣かないで」からはじまるパラグラフでは「パレードにはまたいつかで会える」と歌われる。その後、美しい間奏を経て、さらに重く畳み掛ける言葉が続く。そこで感じるのはこの「パレード」に残置されたなんらかの心象風景だ。その点に気づくと冒頭の情景描写も「泣かないで」も一層重くのしかかる。過ぎた時間に残置された心象というのは誰にでもあることだと思う。しかしここで残された心象は非常に重い。若しくは重かった、と受け止めた。ここに登場するのは「わたし」「あなた」、それから「近眼の共犯者たち」だ。全員がこのパレードに何らかの形で関わっている。そして残置された心象が今もそのギャラリーにある。そのようなイメージがいつまでも消えない。

本作で歌われるのは淡々とした描写とその一方で入り組んだ心象世界だ。しかし二つの世界はパラグラフの中では明確に区切られており構造上交わるところがない。その中で両世界にまたがるキーワードがタイトルにもなっている「パレード」だ。冒頭に補足を入れたのはそのためだ。ここで歌われているパレードがつなぎとめた両世界は淡く重くしかし美しい。そのように受け止めているし本作は彼女にとってとても重要な作品ではないかという気がしている。

Y.ASARI

この曲のMVはこちらです↓

ayaradio727
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誰かのレビューを読んでその作品に触れたい知りたいと思う。そういう体験が私にはたくさんある。もともと文章から想像するのが好きで、レビューやインタビュー、作品にまつわるサイドストーリーにも興味を惹かれるのだ。ASARIさんが本人解説のほとんどない「夜のパレードⅡ」から何らかの心象風景を読み取ってこのようにレビューして下さることで、このレビューをきっかけにこの曲を聴いてみたくなるように書かれていて本当に嬉しい。

山野浅里さんのNoteはこちらです↓

ASARI|note
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