山野浅里レビュー【No.19】ayaradio727「Her Little Garden」

REVIEW

幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。

§Her Little Garden


1st EP発表後の最初の曲がHer Little Gardenだ。この曲のメロディーは彼女の作品の中でもっとも美しいものも一つだと思う。また楽曲構成においてももっともドラマティックな構成の一つだと思う。これまでの活動をしっかり総括できる完成度の高い楽曲だ。またMVもEPで制作されたものを受け継いだ美しい仕上がりになっている。


イントロの静かなピアノは流麗なコード進行とアンビエントスケープが効果的に折り重なる。歌い出しから深いエコーと共にメロディーが刻まれる。Tell Me Your Nameと繰り返される最初のフックはとても美しい。続くバラの名前をラップにしたブリッジ、Sleepless nightへの救いを歌う中間部へのつながりは見事だ。


ここまでのメロディーの美しさに続いて間奏部分はアレンジに圧倒される。美しいインストの間奏はとても幻想的で素晴らしい。ここから一気にエンディングへと向かうがフィーリングを切り替えつつつながりはとてもスムーズだ。この構成力に惹き込まれる。


エンディングで繰り返されるのは、ただそこで咲いているだけ、名前は知らない、何も知らない、という言葉。儚くもありそれは真実でもあると思う。言葉、名前、そしてそこに在るということ、生命、身近な景色を歌いつつ思念に満ちた世界観を表現している彼女の代表作の一つだと言える。

Y.ASARI

この曲のMVはこちらです↓

ayaradio727
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「Her Little Garden」は自分自身の想いを体現した曲ではなく「わたしの小さな庭」のコンセプトに合わせて制作した曲作りだったので、全体像や構成を考えながら冷静に作っていきました。どうしたら庭そのものを音楽で表現できるだろうか、という大きなテーマを掲げて、自分の好きな音色を集めて思い描くイメージに近づけていくためにこのときできる限りの力を込めました。不思議なことにこの曲を作ってから1年後に聴いた時に、「Her Little Garden」の中で歌われる「自分の名前も知らずにただそこで咲いているだけの花」と自分自身の姿が重なった時がありました。わたしは自分の名前を意識して生きているところは花たちとは違うけれど、あまりにも知らないことがたくさんある中でその場所でただただ生きていくことに「Her Little Garden」の世界を通じてシンクロニシティを受け取ったのでした。自分の作った曲が後になって知らせてくれるメッセージがあることに驚きつつ喜びをもたらされた出来事でした。

山野浅里さんのNoteはこちらです↓

ASARI|note
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