山野浅里レビュー【No.25】ayaradio727『Green And Yellow(ほんと?)』

REVIEW

幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。

§Green And Yellow(ほんと?)

カバー曲やリメイク等の作品発表を経て朗読や出版を含むマルチメディア作品や環境音楽への接近など表現の幅を自在に拡げてきたayaradio727が久しぶりにポップミュージックを軸にした作品を発表した。本作はポップミュージックと環境音楽、実験的であったり演劇的であったりする要素、散りばめられた言葉を経て不意に訪れる静寂、全てをひとつに繋ぐ世界観が素晴らしい。

冒頭のタイトル曲Part 1はヒップホップやテクノポップ、ポストパンクやローファイアバンギャルド、レトロエレクトロなどあらゆる要素が浮かぶ。明確に特定のジャンルにコミットする訳ではなくあくまで自然体にそれらの音楽を吸収した表現のように感じる。そこに繊細な言葉が特徴的な歌詞がこれまで以上に記号に満ちた表現の中で敷き詰められている。シンプルな繰り返しを軸にした言葉の組み立て方がむしろ入り組んだ世界観を表しているように感じる。

続くタイトル曲のPart 2とされるトラックはインストを中心にしているが、ピアノのフレーズの抑揚などオリジナルトラックと対照的なアプローチが部分的に挿入されている。このPart 1とPart 2の関係はPart 1で示された歌詞の世界につながるようにも思える。コントラディクション、意味を持たないと歌うことでむしろ示唆する意味のある世界、わずかに異なる2つの世界の組み合わせ、そういったことを表現しているのかもしれない。

最後にごくシンプルな電子音で構成された小さなインスト曲が収録されている。さまざまなメッセージを含むタイトル曲とは対照的に絞り込んだシンプルな構成が印象的だ。またこの楽曲のシンプルさはやはりタイトル曲の歌詞にも繋がるように思う。シンプルな組み合わせと余白が奥行きある物語を作り出す。とても美しいエンディングだと思う。

Y.ASARI

このレビューの元となったEPはこちらです↓

ayaradio727
ayaradio727

不安と混沌の中から生まれたのが「Green And Yellow」の原型だった。どうする事もできなくて、どうしたらいいのかわからなくて、それでふっと出てきたフレーズ。こんなふうにEPとしてリリースが出来たこと、感慨深く、嬉しく思っています。「現実を現像出しに行かなくちゃ」という表現は自分でも面白いなぁと思っていて、コントラディクションをありのままに、というアイデアももともと意図したものではなかったけれど、なんだか面白いものが出てきたように感じている。オリジナルミュージックビデオも久しぶりに作りました。楽しんでいただけたら嬉しいです。

山野浅里さんのNoteはこちらです↓

ASARI|note
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