山野浅里レビュー【No.10】ayaradio727「Something strange」

REVIEW

幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。

§Something strange

まず一般的な話をしたい。自身の座標を知るために他者との比較によって組み立てられた相対地図を使うか、自身が年月をかけて組み立てた絶対地図を使うか。人は可能な限り後者でありたい一方、社会の中で生きる上で前者は切り離せない。もちろん必ずどちらか一つという事でもないだろうが、それでも誰もがそのような逡巡の経験を持つのではないか。

本作は絶対地図への想いとして、”your strangeness may be a gift made with love”(「慈しみながら作られた特別な贈り物」)、と、これは自身に言い聞かせるかのようであると同時に、聴き手に対して語りかける言葉にもなっているが、そのように表現している。この語りかけは楽曲の後段に差し掛かったところで一層意味を帯びてくる。

後段は”What are you going to do in the future?”(「この先どうするつもりなの?」)という問いかけにとても傷ついた、という相対性を帯びた重い問いかけとそれに対する独白からはじまる。問いかけを重い言葉のまま打ち返したり、あるいは問いそのものに沈み込むということもあり得ただろう。しかし本作では決意によって跳ね除ける展開が待っている。その辺りは是非楽曲を聴いてほしい。その上であらためて、この決意を支えるのは「特別な贈り物」という前段で歌われた実に繊細な想いなのではないかと感じる。

相対地図はいつでも強い調子をもって迫ってくる。それを跳ね除けるのは自身が年月をかけて組み立てたとてもささやかな絶対地図だ。特別な贈り物が散りばめられた絶対地図こそ頼りになるのだ。それは冒頭の一般論に対するこの楽曲が聴き手に示した決意のように思える。筆者はそのように受け止めた。

Y.ASARI
ayaradio727
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10曲目の「Something strange」は9曲目の「I’m not there」へのアンサーソングとも見ることができるし、「I’m not there」の主人公への励ましの1曲とも呼べる。作品を作りながら自分自身を肯定するための道筋に気づかされていく。そんな時間をかけたプロセスにも注目して下さり嬉しい限りです。MV撮影も暑かったけれど楽しかった良い思い出の曲です。

山野浅里さんのNoteはこちらです↓

ASARI|note
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