山野浅里レビュー【No.18】ayaradio727 1st EP『いつか、ラジオから』

REVIEW

幸運にも音楽ライターの山野浅里さんがayaradio727の音楽を取り上げてくださることになりました。

§いつか、ラジオから(1st EP)

本作は2022年3月に発表された。前述のノベルティソングやAROUND40から4ヶ月後の発表だ。その間は本作の制作を行なっていたということになる。EPはささやかなイントロダクションを含めて8曲が収録されている。本作については本人解説によると「何気ない私たちの日常生活」と音楽との関係性について意識した作りになっている。実際、歌詞に綴られる世界には日常を垣間見る表現が多く登場する。


冒頭のタイトル曲はSEからはじまりほぼ独唱に近い歌、最後にラジオをイメージした音が配置されEPのオープニングを告げるところで終わる。アーティスト名にもなった「ラジオ」は彼女の音楽活動のキーワードでもあり、タイトル曲がEPの始まりを告げるというのは本作ではじめてまとまった作品集を発表した彼女にとって象徴的なスタートだと思う。


Come trueは本作中もっともわかりやすくポップらしさを提示している曲だ。「懸命に応援し続けてきたある一人のアスリート」について、”your dreams are yours. Be as you are”だという。終わらない夢が続くと歌うその歌はアスリートを通して自分に語りかけているようだ。Sweet Chill Coffee Songは日英各々のバージョンが演奏を変えて収録されている。効果音を含めてコミカルな表現がある一方で優しさ溢れる言葉に真摯な姿勢を感じる。


静かな弾き語りで日常目に映る景色を歌にした昼間の公園、成人すると昼間の公園は無縁になりがちだ。雨に濡れるヘッドホンや向かい風、描写に徹した歌詞だがとても内省を感じる。続くHANDCLAPRAP – 日常 – は完成度の高いMVが素晴らしい。また彼女のヒップホップ路線の一つの到達点だと思う。このまちは、今を歌いつつ「白いカラスの人」や「黒い犬のあの人」の登場による時間の経過を感じる。ラストのHOMEはやはりSEに包まれているが、彼女のドリームポップ色が見事に現れた素晴らしいエンディングだ。本作はこれまでに取り組んださまざまなタイプの楽曲の一つの到達点としての魅力が凝縮されており繰り返し聴きたくなる作りは見事だ。

Y.ASARI

この1st EP収録曲のMVはこちらにまとめてあります↓

ayaradio727
ayaradio727

1st EPはayaradio727最初のミニアルバムとして「いつか、ラジオから自分の曲が聴こえてきたら嬉しいなぁ」の願いを込めてわたし自身の日常に寄り添った曲たちを制作しました。このときに作った曲たちが今もわたしの日々の暮らしを彩ってくれていることが何より嬉しく、このあとに実際にコミュニティFMラジオから自分の歌声や音声が流れてくる体験にもつながっていき、大切なスタートのEPとなっていると思います。それらのプロセスを丁寧に汲み取ってレビューして下さったASARIさんには心から感謝しています。

山野浅里さんのNoteはこちらです↓

ASARI|note
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